渡辺京二著『逝きし世の面影』(葦書房/平凡社ライブラリー)より...

幕末・維新の時代、訪れた外国人たちが見た日本の姿を綴っていて興味深い。ほんのさわりだけ紹介しよう。

 〈いまや私がいとしさを覚え始めている国よ。この進歩はほんとうにお前のための文明なのか。この国の人びとの質朴な習俗とともに、その飾り気のなさを私は賛美する。この国土の豊かさを見、いたるところに満ちている子どもたちの愉しい笑い声を聞き、そしてどこにも悲惨なものを見いだすことのできなかった私は、おお、神よ、この幸福な情景がいまや終わりを迎えようとしており、西洋の人びとが彼らの重大な悪徳を持ち込もうとしているように思われてならない〉

 これは駐日アメリカ総領事館の通訳を務めたヘンリー・ヒュースケン(1832~61)の言葉だ。もうひとつ、イギリスの詩人エドウィン・アーノルド(1832~1904)の言葉。

 〈その神のようにやさしい性質はさらに美しく、その魅力的な態度、その礼儀正しさは、謙譲ではあるが卑屈に堕することなく、精巧であるが飾ることもない。これこそ日本を、人生を生き甲斐あらしめるほとんどすべてのことにおいて、あらゆる他国より一段と高い地位に置くものである〉

 ここに描かれているのは、対人的感性豊かな私たち祖先の姿なのである。

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